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ピアノ教師の考え事を綴っています。

ピアノで暗譜演奏するための練習方法

こんにちは。ピアノ教師・渡邊智子です。

東京の小金井市と三鷹市でピアノ教室を開いています。

ピアノ教室 小金井 三鷹 武蔵境 | 渡邊ピアノ教室

 

今回のテーマは、暗譜です。

 暗譜が苦手、という方は多いと思います。暗譜で弾く時の不安をゼロにすることは難しいかもしれませんが、少しでも不安を減らせるように色々な練習方法をご提案したいと思います。

 

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暗譜は必要?

 

暗譜が苦手な人の特徴

この記事を読んでくださっている方は、おそらく暗譜が苦手でどうにかしたいと考えていることと思います。

私も暗譜は怖いと思います。子供の頃から苦手でした。

でも、子供の頃は練習していると自然に覚えていることが多かったのに、成長するにつれて意識的に覚えていかないと暗譜できなくなってきました。

その反面、子供の頃に苦手だった初見演奏が、徐々にできるようになってきました。

よく、楽譜を見ながら弾ける人は暗譜が苦手と言われたりしますが、それも一理あると思います。見ながら弾けてしまうから覚える必要が無いのです。

更に言うと、初見で弾けてしまう曲に関しては、指に覚えさせるための練習すらしなくなるので、指も頭も覚えていないという状態です。

これでは音楽を理解できていないまま弾いていることになってしまうので、それを避けるために暗譜で練習することは効果があると思います。

  

暗譜のメリットとデメリット

音大の試験やコンクールなどでは、基本、ピアノのソロは暗譜が必須になっています。弦楽器や管楽器の人たちは楽譜を見ても良い場合が多いので、ずっと不公平だと思っていました。

そして今、学生ではなくなり、暗譜するかしないか自分で決められる立場になって思うことは…楽譜を見たからって上手く弾けるわけじゃないよね。ということです。

皆さんが本番前に不安に襲われる原因、第1位は「暗譜」ではないかと思います。ちゃんと覚える練習をしていても、「忘れて弾けなくなったらどうしよう」と考えてしまったりするものです。楽譜があればその不安は解消されるので、緊張・不安が起こるという点は暗譜のデメリットと言えます。

一方で、むしろ、暗譜することによって曲への理解が深まり、自信を持って演奏できる場合もあります。暗譜しないと決めてしまうと、曲の構成を理解せず、ただ楽譜に書いてある音を追って弾くだけになってしまう危険性があるのです。

例えて言うと、本を朗読するのにストーリーを理解せず文字を発音しているだけ、のような状態になってしまうということです。

この状態で本番を迎えると、一文字でも読み方を忘れてしまったら先が読めなくなってしまうかもしれません。でも、ちゃんとストーリー展開を理解して、言葉の意味を租借しながら読んでいれば、一文字間違えるくらいで動揺することはないと思います。

暗譜することで曲の構成(ストーリー)を覚えることができるのは、大きなメリットです。音楽を理解するために、暗譜はできる力を持っていた方が良いということは言えると思います。

 

暗譜するための具体的な練習方法

 

暗譜のメカニズム

ピアニストは曲を記憶する時に、脳の3つの部分を使っているそうです。

  1. 海馬…通常の記憶を司る部位
  2. 視覚野…画像情報を処理する部位
  3. 運動野…運動に関連する部位

まず、音楽家は海馬が大きいそうです。記憶力が良いということなのでしょうか?私はあまり自信ありませんが。

そして、耳から入った情報を画像に変換して視覚野で処理しているという特徴があるとか。音(聴覚)と楽譜(視覚)が繋がっているということなのかな、と思います。

また、指を動かす順番を覚える時には、音楽をやっていない人よりも運動野の活動が強くなるそうです。指の記憶力が優秀ということでしょう。

暗譜するためには、頭・聴覚・視覚・手の動きの全てで記憶する必要があるのですね。

  

身体感覚で覚える

暗譜をする時、まず沢山弾いて指に覚えさせるという方が多いと思います。

動きを覚えるには繰り返し弾くことが必要ですが、毎回違う指使いで弾いていたりすると指は覚えてくれないです。スムーズに弾ける指使いを考えて、その指使いで何回も弾くようにしてみてください。

練習している過程で指使いを変えたくなることもありますが、そういう時は新しい指使いを指に覚えさせるために、以前の指を使ってしまわないよう注意しながら繰り返し弾きましょう。

それから定番の練習だと思いますが、左手だけ暗譜で弾く練習もします。左手は右手のおまけ扱いでちゃんと聴いていないことが多かったりするのですが、そういう状態だと、暗譜した時に左手の音が分からなくなってしまいます。左手の音をちゃんと聴きながら、耳と指で記憶していくようにしましょう。

耳で音楽の流れを覚えることも大切です。音源を繰り返し聴くのも良いですが、記憶を確かめるという意味では、ピアノを弾いていない時に頭の中でその曲を流してみるのが良いと思います。

ついでに、指も動かしてイメージ・トレーニングをすると、音を覚えているか、指の動きを覚えているか、両方の確認ができます。私は、なるべく鍵盤をイメージしながら指を動かすようにしています。ピアノの鍵盤には白鍵と黒鍵があって、どちらを弾くかによって手の形が変わってくるので、そういう部分も思い出しながら進めると効果が上がると思います。

 

頭で覚えるための練習

練習の時は指が勝手に動いてスムーズに演奏できていたのに、本番になったら何の音を弾くのか全く分からなくなるという経験、ありませんか?

感覚だけで覚えているとこういう事態に陥りやすいです。これを避けるためには、頭でもしっかり記憶しておく必要があります。

私は子供の頃から暗譜が苦手と書きましたが、その原因がこれでした。今思えば、子供の頃は何も考えないで弾いていることが多く、「手が覚えている」だけの状態で本番に臨んでいたのだと思います。

練習の時は「何も考えないで指だけ動かす」ことができていても、本番では「何も考えない」ことができなくなってしまうのです。余計な事、つまり「次の音何だっけ?」などと考えてしまうことで、普段の練習と違う状態になり弾けなくなるということが起こります。

そうならないために私が実践しているのは、中途半端な箇所から暗譜で弾いてみる、という練習です。

途中から弾く練習をしている方は多いと思いますが、いつも同じ弾きやすい所から弾いていませんか?「弾きやすい所」から「次の弾きやすい所」までの間が盲点になるので、フレーズの途中など敢えて弾きにくい中途半端な部分からも練習してみましょう。中途半端な所も覚えていることが確認できると、自分の安心感に繋がります。

曲の途中から弾く練習をしていると、なかなか覚えられない、覚えたはずなのに思い出せないという箇所が出てくるかもしれません。そういう時は、曲の分析をして調性や和音の種類などを頭に入れるようにしてみてください。覚えられない箇所をよくよく見たら単純なドミソの和音だった、なんて事もあったりしますよ。

さて、しっかり曲を頭に入れて「大丈夫!」と思って弾き始めても、なぜか指が違う音を触ってしまったり上手くいかないこともあります。でも、覚えているので間違えた所から弾き直すことはできます。これで満足なら問題無いのですが、人前で弾くとなったらなるべく弾き直しせず、最小限のミスで食い止めたいですよね。

音楽は一度出した音を消すことができないので、覚えていても、間違えて弾いた後に思い出すのでは手遅れです。私は結構こういうことがあるので、注意点を思い出すためのトリガーを設定するようにしています。間違えやすい箇所の手前に思い出すポイントを設定して、そこにきたら「次、注意!」と思い出す練習をするのです。こうすると、無意識の状態でどこを弾いているのか分からなくなる、といった事態を防ぐことができます。

それから、読譜が苦手な人にありがちなパターンで、譜読みして弾く鍵盤の位置を覚えてしまうと、その後一切楽譜を見ないということがあります。前にも述べたように、ピアニストは音を画像としても記憶しているようなので、楽譜のイメージを頭に入れておくのも大事なのではないかと思います。

一音一音記憶するのは難しいですが、最低限、楽譜のどの辺り(2ページ目の上の方、など)を弾いているのかは意識できるようにしておきましょう。そのイメージを持ちながら、頭の中で音を鳴らして、指を動きを確認するイメージ・トレーニングをするのも効果的です。

 

まとめ

 

今回は、様々な感覚と脳を使って暗譜するための練習方法をご紹介しましたが、如何でしたか?

私自身、暗譜が不安になるのはどんな時?と考えると、ピアノが無い環境で曲のことを考えている時になります。

ということは、ピアノが無い環境で曲のことを考える練習をすれば不安がなくなるのでは?という発想で、イメージトレーニングを取り入れたりしました。

皆さんも、自分の苦手なことを見つけて強化してみてください。

最後に、今回参考にした本を1冊ご紹介します。

 

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム

 

大量の曲を頭の中にストックしているピアニストさんもいますが、そういう方たちの脳の特徴とか、暗譜するための効果的な練習法とかがもっと解明されると嬉しいですね。

では、今回も最後までお読みいただきありがとうございました。