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ピアノ教師の考え事を綴っています。

読譜が苦手なピアノ学習者の方へ

こんにちは。ピアノ教師・渡邊智子です。

東京の小金井市と三鷹市でピアノ教室を開いています。

ピアノ教室 小金井 三鷹 武蔵境 | 渡邊ピアノ教室

 

今回のテーマは読譜

「読譜が苦手」という方、多いと思います。

新しい曲に挑戦しようと思った時に、読譜に時間がかかりすぎて気持ちが折れてしまうこともあるかもしれません。

1曲に時間をかけてじっくり取り組むのも悪くないですが、特に、色々な曲を弾きたいと思っている方は、読譜力を付けておくに越したことはないはずです。

正直、「今日からすぐに読譜が得意になる」という便利な方法は無いです。が、効率良く読譜を進めるためのコツは色々あります。

この記事では、どういった点に気を付けて譜読みをすると効率よく進められるのか、ということを中心に、応用が効く読譜の仕方をお伝えできればと思っています。

 

 

 

音楽と語学は似ています

 

音符は簡単に読めます

音楽は語学と似ているところがあります。

演奏者は文字の代わりに音符を読み、口で発音する代わりに楽器を鳴らします。

ですが文字と音符を比べてみると、音符は規則性があるのに対して、文字の形には規則性がありません。

音符は決められた順番通り数えることができれば、誰でもすぐに読むことができます。対して文字は、一つ一つの形とその発音を覚えていかないと読むことができません。

私たち日本人は平仮名、カタカナ、漢字を使うので、合計すると数えきれないほどの数の文字を記憶し、その一つ一つの発音を覚えていることになります。それに比べたら、音符を読むなんて簡単なはずです。 

では、なぜ多くのピアノ学習者が読譜に苦労することになってしまうのでしょうか?

  

読譜に時間がかかる原因は?

引き続き、語学と比較して考えてみます。

英語の試験(TOEIC)などを思い浮かべてみると、一括りに語学と言っても、必要な能力が色々あることが分かると思います。TOEICでは、「リスニング」「リーディング」「スピーキング」「ライティング」に分類されていますね。

ピアノ演奏に置き換えてみると、「読譜=リーディング」で「演奏=スピーキング」になります。

要するに、「楽譜を読めること(黙読)」と「演奏(発音)できること」は違うのです。

そう考えると、新しい曲の練習を始めた時に読譜に時間がかかるという方は、「リーディング」か「スピーキング」のどちらかが苦手ということになります。

これは私個人の意見ですが、今まで多くの生徒さんを見てきた経験から言うと、「読譜が遅い」=「音符を音名で読むことに時間がかかる」パターンが多いように思います。 

もし、「音名で読むのは早くできるけど、指が違う鍵盤を押してしまう」という方がいたら、それは技術面の問題が大きいでしょう。

では、読譜が遅い原因が「音名で読むことに時間がかかる」ことだとして、その作業は本当に必要なのでしょうか?

音符を見て音名に変換する作業を抜かしてしまえば、読譜が早くなるのではないでしょうか?

 

見てから弾くまでの思考

例えば、私たち日本人はひらがなを読んで発音するのに、いちいち唇や舌の動きを意識しません。ですが、英語などの外国語を最初に学ぶ時は、まず唇や舌の動きを意識しながら発音を練習します。慣れてくると、動きを意識しなくても発音できるようになり、文字を見たら口が動くという条件反射が起こる状態になります。

それと同じで、譜読みが早い人や初見が得意な人は、「これはドだからこの鍵盤を押して…」などと考えていません。楽譜を見ながら条件反射で指が動くように訓練されているのです。

 

音符を見る→鍵盤を探して打鍵する(と同時に音名が浮かぶ?)

 

この間に「ドレミ」を読み取る作業が入ると、その分時間がかかります。

 

音符を見る→音名に変換する→鍵盤を探して打鍵する

 

もちろん、すぐに音名が浮かんで打鍵に移れるなら問題無いですが、読譜が遅い人は、この音名に変換するところで手間取ってしまうパターンが多いと思います。

極端な話ですが、音名が分からなくても、楽譜を見て弾くことはできます。音符の位置と鍵盤の位置の関係性が分かっていれば良いのです。

音符の高低の動きを読み取って、鍵盤の左右の位置と関係付けて指が反応するようになると、読譜が早くできるようになります。 

読譜が遅いと悩んでいる方は、音符を見てから鍵盤を押すまでの自分の思考を分析してみてください。もし音符を音名に変換してから弾いていたら、音の高低だけで鍵盤の位置を探すような練習をしてみましょう。

 

読譜を早くするために気を付けるポイント

 読譜を速くするためには、音符と鍵盤の位置関係を意識することが大切です。

と言われても、その位置関係を把握するのが苦手な方も多いと思います。

ここからは、具体的に気を付けたいポイントを書き出していきますので、使えそうな部分から試してみてください。

 

音程 

皆さん、音符が「線」「間」の順番で並んでいることはご存知でしょう。まず、この性質を利用して見ていきます。

 

  1. 「線・間」「間・線」の順番で、直線的に並んでいたら「音階」
  2. 「線・線」や「間・間」の順番で、和音で書いた時に隙間なく積み上がれば「1個とばし」
  3. 「線・間」「間・線」は偶数個空く。例)「ドファ」(レミの2個分空く)
  4. 「線・線」「間・間」は奇数個空く。例)「レラ」(ミファソの3個分空く)

 

上記の例のように、音符同士の間隔(見た目)で鍵盤がどのくらい空くか分かるようにすると、効率よく読譜が進められます。

 

グループ化 

音符を一つずつ見ていると効率が悪いです。いくつかの音をまとめてグループとして捉えることで、よく出てくるパターンが見えてきます。

有名な「エリーゼのために」の左手を例に考えてみましょう。楽譜がある方は見て確かめてください。

最初は「ラミラ」、次が「ミミソ」、また「ラミラ」です。「ラミラ」が2回出てくるので、ここは同じ音として覚えられると思います。次も「ラミラ」「ミミソ」「ラミラ」なので、覚えやすいですね。

続きに進みます。

「ドソド」「ソソシ」、ここで新しい音が出てきました。ですが、これは先程の「ラミラ」「ミミソ」と同じパターンです。

 

 →(前のラから数えて5番目の)→(前のミから数えて4番目の)

 →(前のミから1オクターブ上の)→(前のミから数えて3番目の)

 

 ド→(前のドから数えて5番目の)→(前のソから数えて4番目の)

 →(前のソから1オクターブ上の)→(前のソから数えて3番目の)

 

このように、一見すると違う音でも、実は同じパターンで動いている場合が多くあります。これを見破れるようになると、読譜が楽になります。

 

和音 

よく使う和音の形(基本形、第一転回形、第二転回形)を覚えておくと便利です。

基本形というのは「ドミソ」の形 で、楽譜で見ると音符が隙間なく上に積み重なっている状態になっています。鍵盤で見ると、1個空きの順番で押さえることになります。

第一転回形は「ミソド」で、楽譜では一番上の音が少しだけ離れています。鍵盤上では、1個空き(ミソ)と2個空き(ソド)の組み合わせになります。

第二転回形は「ソドミ」。第一転回形の逆で、一番下の音だけ少し離れています。鍵盤上では、2個空き(ソド)と1個空き(ドミ)の組み合わせです。

基本形は分かりやすいですが、第一転回形と第二転回形が区別しにくく、弾きにくかったりするので、色々な鍵盤でこの形の和音を弾く練習をして馴染んでおくと良いと思います。

 

黒鍵 

調号や臨時記号が多くなると難しい、と感じる方も多いと思います。

ですが、よく見てみると黒鍵は数が少ないですし、白鍵よりも特徴があって覚えやすいはずなのです。

という訳で、むしろ黒鍵を目印に使って鍵盤の位置を覚えていくようにしてみてください。

ここでも音名に変換しないことをお勧めします。黒鍵はシャープかフラットかによって、同じ鍵盤でも音名が変わってしまうため、混乱しやすいです。

黒鍵が2個の場所(ドレのシャープ)か、3個の場所(ファソラのシャープ)か、といった感じで見るようにしてみてください。

例えば「ソのシャープ」だったら「3個の真ん中」と覚ると早いです。

 

弾けるけど音名が分からないという状態にならないように

さんざん音名に変換しないことをお勧めしてきましたが、音名が全く分からないのも不便です。

レッスンに行った時に、先生から「そのドミソの部分から弾いてみて」と言われても、「どこだか分からない」ということになりかねません。

ですので、音名で読む練習も別に行いましょう。メロディーだけ音名で歌ってみたり、ランダムに指さした部分を音名で読んでみたり、弾かずに読む練習で構いません。慣れてきたら、弾きながら歌ったりしても良いと思います。

 

 

数をこなすことが必要

少し私自身の話をします。

子供の頃は、初見が苦手で読譜に時間がかかるタイプでした。読譜が嫌いというわけではなかったけれど、沢山の曲を同時にこなせるような読譜力は持ち合わせていませんでした。

その後も大した進歩はなかったのですが、一念発起して大学院に入ってから状況が変わります。そこでは課題が何曲も出て、新しい曲をどんどん譜読みする状況になりました。

そして、ピアノ教師としての仕事を本格化してからは、それぞれの生徒さんが持って来る曲に対応する必要に迫られ、自然と初見力も身に付いてきました。

こういった経験上、どんどん新しい楽譜を見て弾くことで、読譜力が身に付いていくということを実感しています。

一つの曲にじっくり取り組むのも悪いことではないけれど、譜読みを早くしたいなら多読練習は必須です。

難しい曲はその1曲にかかりきりになってしまいがちなので、読譜力強化のためには、できるだけ易しいと感じる曲を沢山譜読みしてみてください。

 

最後に

文字が読めなくても会話ができるように、楽譜が読めなくても演奏することはできます。

ですが、楽譜にはその音楽の答えが書いてあります。読めた方が練習しやすいです。

 

ぜひ読譜力を身に付けて、弾きたい曲にどんどん挑戦できる楽しみを見出してください。

今回は、音の高さと鍵盤の位置に的を絞ってお話ししましたが、読譜にはリズムを読み取る作業も加わります。この点については、また別記事で書いていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。