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ピアノ教師の考え事を綴っています。

【雑談】MET LIVE VIEWING 2019『カルメル会修道女の対話』

こんにちは。ピアノ教師・渡邊智子です。

東京の小金井市と三鷹市でピアノ教室を開いています。

ピアノ教室 小金井 三鷹 武蔵境 | 渡邊ピアノ教室

 

先週のことですが…久々に映画館へ行ってきました。

と言っても、目当ては映画でなくオペラ。

メトロポリタン歌劇場のオペラを映画館で上映する「MET LIVE VIEWING」という企画です。

何年も続いているイベントなので、ご存知の方も多いかもしれないですね。

 

www.shochiku.co.jp

 

今回、私が観てきたのは『カルメル会修道女の対話』という、フランスの作曲家フランシス・プーランクの作品です。

 

 

プーランクは様々な編成の作品を残していますが、特に管楽器の作品に名曲が多く、演奏される機会も多い印象があります。一番有名なのは、フルート・ソナタでしょうか。

 

 

ピアノ曲も小品から大曲まで色々書いていて、メロディーの美しい作品ばかり。

オペラは3作しか書いていないのですが、『カルメル会修道女の対話』は初演時から変わらず評価の高い作品ですし、登場人物がソプラノ一人という珍しい形態のオペラ『人間の声』も名作として知られています。

 

突然ですが、皆さん、オペラにどんなイメージをお持ちですか?

敷居が高そうで、あまり観たことがないという方もいらっしゃるかもしれませんが。

有名な『椿姫』『トゥーランドット』『トスカ』などを観ると、恋愛(ドロドロなことが多い)と死(病死か殺人)が定番ネタ、というイメージがあるのではないでしょうか?

私自身、歌手の表現に感動することはあっても、物語や登場人物に感情移入はできないことが多いです。「恋敵だからって、そんなに簡単に殺さなくても、ねぇ。」などと思いながら、つい冷めた目で観てしまうこともあります。

 

『カルメル会修道女の対話』は、そんなよくあるドロドロ恋愛のオペラとは違います。

 

題名の通り、カルメル会(カトリック)の修道院を舞台にした、修道女たちの物語ですが、フランス革命下に起こった史実が元になっています。 

どんな出来事かというと…

 

16人のカルメル会修道女の処刑。

 

革命派のカトリック弾圧に反して信仰を貫いた修道女たちが処刑されたのです。

 

このオペラでは、主人公ブランシュが修道院に入る経緯から、修道女たちが処刑されるに至るまでの過程が描かれています。

ということは、オペラの最後は登場人物たちが処刑されていくわけですね。

ラストは「サルヴェ・レジーナ(聖歌)」が歌われる中、修道女が舞台から去る度にギロチンの音が聞こえてくる(計16回)という、なんとも心臓に悪い演出になっています。

心の健康には害がありそうですが、ギロチンの残虐さとの対比で「サルヴェ・レジーナ」が一層美しく響いてくる効果も否定できません。私は、オペラを観て久々に心を揺さぶられる感覚を味わいました。

 


ギロチンの音があまりにリアル(実際に聞いたことないですが)だったので、何の楽器を使っているのか調べたところ、プーランク自身が指定した楽器は無いようですが、ムチや太鼓を使っていることが多いみたいです。それにしても、どうやってあんな音が出るのか不思議。

 

ラストが衝撃的すぎて、それ以前の記憶が薄れてしまいそうでしたが、第2幕で修道院長が亡くなるシーンも見応えがありました。

修道院長を演じていたのは、フィンランド出身のソプラノ歌手、カリタ・マッティラ。

いつも思うことですが、上手なオペラ歌手は、歌っていることを感じさせないです。歌いながら演技をしているのではなく、演技の要素の一つとして歌を使っているという風に感じます。つくづく、オペラ歌手って女優だなぁ。 

そして、この修道院長の死に際の苦しみが、その後の残酷な出来事を予感させるのです。

 

このような作品なので、気分が滅入っている時に鑑賞するのは絶対にオススメしません!

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』くらい、心にズッシリきます。余談ですが、私はこの映画を午前中に観てしまい、その日ずっとどんよりした気分だったなぁ、ということを思い出しました。 

 

『カルメル会修道女の対話』を鑑賞する前、全く宗教に詳しくない私でも内容を理解できるか、若干の不安がありました。私のカルメル会に対する知識は、「先日読んだ『オリジン』(ダン・ブラウン著)の中で、ガウディと関係があったと書いてあったなぁ」というくらいの微々たるものです。

ですが実際にこのオペラを観て思ったのは、時代背景(フランス革命の時にカトリックが弾圧されていたこと)だけ知っていれば理解できるし、私のような不信心な人にも伝わる普遍的なテーマを持った作品だということです。

修道院が舞台なので宗教的な内容は当然あるものの、むしろ万人に共通する「どう生きて、どう死ぬか」という課題を投げかけられているように感じました。

キリスト教徒じゃなくても、殉教という思想に共感できなくても、一度は見る価値がある作品です。