こんにちは。ピアノ教師・渡邊智子です。
東京の小金井市と三鷹市でピアノ教室を開いています。
レッスンをしていると、ペダルの踏み方で生徒さんが苦戦するのを度々見ることがあります。
そんな訳で、今回のテーマはペダルにしました。特によく使うダンパーペダルについて、演奏技術と楽器の仕組みを交えて書いていきたいと思います。
Photo by Azamat Zhanisov on Unsplash
ペダルについて知っておきましょう
ピアノは指で鍵盤を押して音を出す楽器ですが、足で踏むためのペダルも2本か3本付いています。最初に、ペダルの種類と仕組みを知っておきましょう。
ペダルの種類
今回取り上げるのは、一番よく使う右側のダンパーペダルと呼ばれるペダルです。指で鍵盤を押し続けなくても、ペダルを踏むことによって音を延ばすことができます。このペダルを踏むと、音がよく響いて美しく聴こえる効果があるので、ピアノを弾けるようになった人にとっては是非とも使いたい機能です。
ですが、使い方を間違えると、全部の音が同時に響いてカオスのような状態になってしまいます。上手に使いこなすには、指で鍵盤を押すタイミングと離すタイミング、足でペダルを踏むタイミングと離すタイミング、全てを連携させなくてはなりません。このタイミングを掴むコツについては、後の項目で詳しく説明します。
次によく使うのが左側にあるペダルで、ソフトペダル又はウナ・コルダと呼ばれています。ソフトという名称からも分かるように、音を小さく柔らかくする効果があります。このペダルは、頻繁に使うピアニストさんもいれば、極力使わないというピアニストさんもいます。
そして、出番の少ない真ん中のペダルですが、グランドピアノの場合はソステヌートペダルと呼ばれる物になります。残したい音だけ弾いた状態でペダルを踏むと、その音が鳴っている状態で他の音は普通に弾くことができます。便利そうですが、ほぼ使いませんし、ピアノの機種によっては付いていないこともあります。
アップライトピアノでは、真ん中のペダルは弱音装置になっていて、こちらは小さい音で練習したい時に使う方も多いと思います。
ダンパーペダルの仕組み
では、今回のテーマであるダンパーペダルについて、その仕組みから理解していきましょう。
ピアノはハンマーが弦を打って音を出す楽器だということはご存知の方も多いと思いますが、鳴った音を止めるためにダンパーという物があるのは知っていますか?
この装置が無いと、一度ハンマーで打たれた弦は、その振動が自然に収まるまで音を出し続けることになってしまいます。ドレミファソの音を順番に一つずつ鳴らしたいと思ったら、ドを弾いた後その音が消えるまで待たなくてはなりません。間髪入れずに弾けば、ドが鳴っている上にレが鳴って、更にミ、ファ、ソと全ての音が混ざって響くことになるからです。
一つ一つの音を分けて鳴らすらめに、ダンパーはピアノに無くてはならない装置です。
そして、そのダンパーを無効にするのがダンパーペダルという装置なのです。
こちらの記事で仕組みが詳しく解説されています↓
ダンパーペダルを使う目的
では、実際ダンパーペダルはどういう時に使われるのでしょうか?主な使用目的を見ていきましょう。
音を繋げるために使う
ダンパーペダルは、指が届かないなどの理由で音を繋げて弾くことができない時に、補助として使うことができます。
試しに、右手の親指で真ん中のドを弾いてから、同じ右手の小指で2オクターブ上のドを弾いてみてください。手を広げても届かないので、真ん中のドを一旦離してから次のドを弾くことになり、音の響きが途切れてしまいます。
では、真ん中のドを弾いた時にダンパーペダルを踏んでみてください。そして、ペダルを踏んだまま手だけ離します。音が残っていますか?その状態で次のドの音を弾けば、響きを切らずに弾くことができます。
音の響きを混ぜたい時に使う
例えば、ドミソと順番に弾いてから、更に1オクターブ上でドミソと弾き、またその1オクターブ上でドミソと弾く場合。全部の音を最後まで鳴らし続けるのは無理だと思います。指が届く範囲なら鍵盤を押し続けて響きを持続させられますが、指が届かなくなったところで前に押した鍵盤を離さないと次が弾けなくなります。
ダンパーペダルを使うことで、この問題が解決できるのです。
最初のドを弾いたらペダルを踏んで、最後のソを弾くまで踏み続ければ良いだけです。しかも、全ての弦が解放されて共鳴するので、指だけで音を残すより響きが増して美しく聴こえます。
ダンパーペダルはこの目的で使われることが一番多いと思います。ペダルを踏むことでしか出せない響きが味わえるので、ピアノを習い始めて少し弾けるようになると「ペダルを使って響かせたい」と思ってしまう、魅力的な機能です。
アクセントペダル
もう一つ、 音を強く出すために使うこともあります。
アクセントペダルと言われていて、音楽用語の「アクセント(その音を際立たせる)」をご存知の方には、分かりやすい使い方だと思います。メリハリを利かせたい時に使う方法です。コツは、音を出すと同時に踏んですぐに離すこと。長く踏みすぎるとハッキリ感が出なくなります。
ペダルの踏み替え
ここから少し高度な技術の解説をしたいと思います。
殆どの場合、ペダルは適度に踏み替える必要があります。踏んだら踏みっぱなしではダメ、「踏む」と「離す」を繰り返すことで効果的に使えるのです。
踏み替えないと濁る
ダンパーペダルをずっと踏んでいると、その間弾いた音が全て混じってカオス状態になります。この状態を「ペダルが濁ってる」と言います。ペダルを濁らせず上手く使いこなすには、適切なタイミングで踏んだり離したりを繰り返すことが必要です。
試しに、ペダルを踏みながらドミソと弾いて、そのままペダルを離さずシレファと弾いてみてください。ドミソだけの時はスッキリした響きだったのが、シレファが入ると濁った感じになりませんか?
音楽的に混ざって良い音と混ざらない方が良い音があります。これらを区別してペダルを踏み替えることで、美しい音楽を奏でることができるようになるのです。
踏み替えるタイミング
指が届かない二つの音を繋げるためには、最初の音をペダルで残した後、次の音が鳴るまで踏み続けなくてはいけません。次の音が鳴ったタイミングでペダルを離すと、二つの音が混じらず繋がって聴こえます。身体の動きで説明すると、指が二つ目の音を押す(下に動かす)タイミングで足はペダルを離します(上に動かす)。
更に三つ目の音に繋げたい時は、離したペダルをまたすぐに踏みます。指が二つ目の音を押している間に踏まなくてはならないので、速い曲だとかなり忙しいですが頑張ってください。
濁らない踏み方
上記の踏み替えるタイミングは、ペダルを長く踏んだ後の踏み替えにも応用できます。
例えば、1小節ごとに踏み替える場合、次の小節の最初の音と同時に踏もうとすると、だいたい濁ります。前の小節の最後の音の響きが終わらないうちに踏んでしまうことが多いからです。この問題は、次の小節の最初で離すようにすると解決できます。
この踏み替えのタイミングをマスターすると、ペダルを濁らせずに使うことができるようになるので、ぜひ実践してみてください。
最後に
ダンパーペダルについて、おおよそご理解いただけたでしょうか?
ピアノ学習者の皆様が、ペダルを上手に使いこなせるヒントになってくれればと思います。細かい技術的な部分は、文字で説明するのが難しかったので、分かりにくいことがあればご質問ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。